業種の棚 · SEC-33
継続課金 · スイッチングコスト · ネットワーク効果

情報通信業を歩くA quiet map of the sector

この業種を、企業名の一覧ではなく、
構造と問いから静かに見るためのページです。

東証プライム · 情報通信業 · 173社

この業種を見るとき、最初に問うべきこと

情報通信業を分析するとき、最初に問うべきことは一つある。「顧客は、なぜ使い続けるのか」。

売上が伸びているかどうかではない。顧客が離れにくい構造があるかどうか、である。

情報通信業の企業価値は、継続収益の安定性と、スイッチングコストの深さで大きく変わる。そこを見ないまま、成長率や利益だけを追うと、構造の弱い企業を高く買ってしまうことがある。

継続課金・スイッチングコスト・ネットワーク効果——この三つが、情報通信業の利益の持続性を決める。

この業種は何で稼ぐのか

「情報通信業」という一枚の括りの中に、稼ぎ方がまったく異なる複数のビジネスモデルが共存している。分析を始める前に、どのサブセクターを見ているかを確認することが先決である。

TYPE 01
通信インフラ
回線・基地局・設備に先行投資し、月額課金で回収する。規制産業。設備の減価償却が重く、FCF構造の理解が必須。
NTT · KDDI · SoftBank
TYPE 02
SIer・ITサービス
企業向けにシステムを構築・運用する。労働集約的。顧客の業務に深く入り込むほどスイッチングコストが高まる。
NTTデータ · 富士通 · NEC
TYPE 03
ソフトウェア・SaaS
一度開発したソフトウェアを繰り返し提供する。限界費用が低く、スケールするほど利益率が改善しやすい。
オービック · TIS · 弥生
TYPE 04
プラットフォーム
利用者が増えるほど価値が高まるネットワーク効果型。勝者総取りになりやすく、確立されたポジションは崩れにくい。
リクルート · Mercari · DeNA

moatはどこに宿るか

moatが宿る場所は、サブセクターによって構造が違う。同じ「情報通信業」でも、根拠が異なる。

通信インフラのmoatは、設備投資の規模と規制による参入障壁にある。ただし、規制が変わればmoatも変わる。「競争優位」ではなく「規制による保護」である場合もある。

SIerやソフトウェア企業のmoatは、顧客業務への深い埋め込みにある。基幹システムを一度入れ替えると、費用・時間・リスクが膨大になる。この「痛みの大きさ」がスイッチングコストの本質である。

プラットフォーム企業のmoatは、ネットワーク効果にある。ユーザーが増えるほど価値が高まり、自己強化する。ただし、ネットワーク効果がマルチホーミング(複数サービスの同時使用)によって弱体化しないか、確認することが必要になる。

スイッチングコストは、金銭的なコストだけではない。時間・リスク・習慣・関係性も含む。その多くは財務諸表には現れない。

見るべき指標と、その理由

指標を見るとき、数値の大小だけではなく「なぜその指標を見るのか」を意識すると、分析が整理される。

この業種で起きやすい誤認

「情報通信業」は括りが広すぎる。業種名だけで判断すると、構造の異なる企業を同じ基準で見てしまいやすい。

主要企業への入口

各社がどのサブセクターに属し、何で稼いでいるかを確認してから分析に入ってください。同じ「情報通信業」でも、見るべき指標とmoatの構造はまったく異なります。

この棚から、分析へ進む

業種の地形を把握したら、次は個別企業へ。以下の道具を手に取ると、分析の視点が整理されます。

この棚の隣に置いてある本

業種の地形を把握したら、次の三冊と並べて読むと視点が深まる。moatで競争優位の構造を問い、FCFで資本の実態を読み、テンプレートで企業を整理する。