この業種を、企業名の一覧ではなく、
構造と問いから静かに見るためのページです。
情報通信業を分析するとき、最初に問うべきことは一つある。「顧客は、なぜ使い続けるのか」。
売上が伸びているかどうかではない。顧客が離れにくい構造があるかどうか、である。
情報通信業の企業価値は、継続収益の安定性と、スイッチングコストの深さで大きく変わる。そこを見ないまま、成長率や利益だけを追うと、構造の弱い企業を高く買ってしまうことがある。
継続課金・スイッチングコスト・ネットワーク効果——この三つが、情報通信業の利益の持続性を決める。
「情報通信業」という一枚の括りの中に、稼ぎ方がまったく異なる複数のビジネスモデルが共存している。分析を始める前に、どのサブセクターを見ているかを確認することが先決である。
moatが宿る場所は、サブセクターによって構造が違う。同じ「情報通信業」でも、根拠が異なる。
通信インフラのmoatは、設備投資の規模と規制による参入障壁にある。ただし、規制が変わればmoatも変わる。「競争優位」ではなく「規制による保護」である場合もある。
SIerやソフトウェア企業のmoatは、顧客業務への深い埋め込みにある。基幹システムを一度入れ替えると、費用・時間・リスクが膨大になる。この「痛みの大きさ」がスイッチングコストの本質である。
プラットフォーム企業のmoatは、ネットワーク効果にある。ユーザーが増えるほど価値が高まり、自己強化する。ただし、ネットワーク効果がマルチホーミング(複数サービスの同時使用)によって弱体化しないか、確認することが必要になる。
スイッチングコストは、金銭的なコストだけではない。時間・リスク・習慣・関係性も含む。その多くは財務諸表には現れない。
指標を見るとき、数値の大小だけではなく「なぜその指標を見るのか」を意識すると、分析が整理される。
「情報通信業」は括りが広すぎる。業種名だけで判断すると、構造の異なる企業を同じ基準で見てしまいやすい。
各社がどのサブセクターに属し、何で稼いでいるかを確認してから分析に入ってください。同じ「情報通信業」でも、見るべき指標とmoatの構造はまったく異なります。
業種の地形を把握したら、次は個別企業へ。以下の道具を手に取ると、分析の視点が整理されます。
業種の地形を把握したら、次の三冊と並べて読むと視点が深まる。moatで競争優位の構造を問い、FCFで資本の実態を読み、テンプレートで企業を整理する。