SHELF 04 — 人間の認知を知る

サンクコスト
もったいないが判断を狂わせる

すでに費やしたコストは、未来の判断に影響すべきではない。
しかし人間の脳は、それを許さない。

サンクコストの罠とは

サンクコスト(埋没費用)とは、すでに費やされ、回収不可能なコストのことである。そして人間は、このサンクコストを理由に非合理的な判断を下し続ける。

つまらない映画を最後まで見てしまうのは、チケット代がもったいないからである。合わないレストランで最後まで食べるのは、注文代金がもったいないからである。これらは日常のささいな例だが、投資の世界では深刻な問題になる。


投資におけるサンクコストの罠

投資の場面では、サンクコストの罠は以下のように現れる。

  • 損切りできない — 「ここまで下がったのだから、もう少し待てば回復するはず」。しかし企業の本質的価値が毀損しているなら、回復しない可能性が高い
  • ナンピン買い — 株価が下がったから買い増す。これは合理的な場合もあるが、「買値を下げたい」というサンクコスト的な動機で行われることが多い
  • 調査に費やした時間への執着 — 何十時間も分析した企業を、分析結果が否定的でも買ってしまう。「せっかく調べたのだから」は、投資判断の根拠にはならない

マンガーは言った。「穴の中にいるなら、掘るのをやめよ」
これはサンクコストの罠への最も簡潔な対処法である。
過去の判断がどうであれ、今の判断は今の情報で行え。


合理的な撤退の基準

合理的な投資判断において、問うべき質問は一つだけである。

「もし今この株を持っていなかったとして、今日この価格で買うか?」

答えがノーなら、売るべきである。過去にいくらで買ったかは関係ない。過去に何時間分析したかも関係ない。

この質問は簡単に聞こえるが、実行するのは極めて難しい。なぜなら、サンクコストの罠は意識的に回避しようとしても、無意識レベルで判断を歪めるからであ���。

  • 定期的にポートフォリオを「白紙」の目で見直す習慣を持つ
  • 買った理由(投資テーゼ)を事前に書き出し、それが崩れたら売ると決める
  • 含み損益を表示しない設定にして、銘柄の現在の状況だけで判断する

より広い教訓

サンクコストの罠は投資だけの問題ではない。キャリア、人間関係、事業判断のあらゆる場面で作用する。

「ここまでやったのだから」は、継続の理由にはならない。未来の最善の行動は、過去に何を費やしたかではなく、現在の状況と将来の見通しだけで決まる。

マンガーがメンタルモデルとして心理学を重視した理由がここにある。自分の認知の歪みを知ることは、投資家としてだけでなく、人間として成長するための基礎である。

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