複利とは何か
複利(compound interest)とは、元本だけでなく、すでに得た利息にも利息がつく仕組みのことである。
単利が「平地を歩く」ことだとすれば、複利は「坂道が次第に急になる」ことに似ている。最初はほとんど差がないが、時間が経つほど差は劇的に広がっていく。
100万円を年10%で運用した場合を見てみよう。
| 年数 | 単利(10%) | 複利(10%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 110万円 | 110万円 | 0円 |
| 5年 | 150万円 | 161万円 | 11万円 |
| 10年 | 200万円 | 259万円 | 59万円 |
| 20年 | 300万円 | 673万円 | 373万円 |
| 30年 | 400万円 | 1,745万円 | 1,345万円 |
30年後、単利では4倍にしかならないが、複利では17倍以上になる。この圧倒的な差が、長期投資家が時間を味方にできる根拠である。
バフェットが複利で見せたもの
ウォーレン・バフェットの資産の95%以上は、65歳以降に築かれたものである。
これは彼が晩年に急に賢くなったからではない。若い頃から積み上げてきた複利の効果が、時間の経過とともに指数関数的に拡大した結果である。
バフェットが11歳で最初の株を買ったことは有名な話だが、重要なのはその事実そのものではない。彼が70年以上にわたって複利の力を止めなかったことが重要なのだ。
"人生は雪だるまのようなものだ。大切なのは、十分に湿った雪と、十分に長い坂道を見つけることだ。"
── Warren Buffett
「十分に湿った雪」とは、良い投資先(高いリターンを安定的に出せる企業)のことである。「十分に長い坂道」とは、時間のことだ。この二つが揃ったとき、複利は驚異的な力を発揮する。
複利が効くための3つの条件
複利は魔法ではない。効果を最大化するには、3つの条件が必要である。
1. 時間を味方にすること
複利の効果は、初期には微々たるものだ。真の力は10年、20年、30年という時間軸で現れる。だからこそ、「いつ始めるか」よりも「どれだけ長く続けるか」が重要になる。
2. 途中で引き出さないこと
複利の連鎖を断ち切ることは、坂道を登る途中で雪だるまを壊すようなものだ。短期的な利確や感情的な売買は、複利効果を根こそぎ奪う。バフェットの「保有期間は永遠」という姿勢は、複利を最大化する戦略そのものである。
3. 元本を守ること
複利の前提は、元本が毀損しないことだ。50%の損失を取り戻すには100%のリターンが必要になる。マンガーが「第一のルールは、絶対にお金を失わないこと」と繰り返したのは、複利の数学を深く理解していたからである。
なぜ人は複利を過小評価するのか
複利の概念自体は誰でも理解できる。しかし、その効果を直感的に実感できる人は極めて少ない。
人間の脳は、線形(直線的な)変化には対応できるが、指数関数的な変化を直感で把握することが苦手だ。「10年後に2.6倍」と聞くと実感が湧くが、「30年後に17倍」と聞いても現実感がない。
この認知のバイアスが、多くの人を短期的な利益に向かわせる。目の前の10%の利益確定は、30年後の17倍の可能性よりも、はるかに魅力的に感じてしまう。
だからこそ、複利を理解するだけでなく、複利を信じて行動し続ける精神的な強さが、長期投資家に求められる最も重要な資質なのかもしれない。
"投資における最大のリスクは、複利を止めてしまうことだ。市場の変動よりも、投資家自身の行動のほうが、はるかに大きなリスクである。"
複利は投資だけのものではない
マンガーは「複利の考え方は人生のあらゆる場面に当てはまる」と語った。
知識の複利。毎日少しずつ読書し、学び、考え続ければ、知識は指数関数的に深まっていく。10年前に読んだ本の知見が、今日読んだ本と結びつき、新しい洞察を生む。
信頼の複利。誠実な行動を積み重ねれば、信頼は雪だるま式に大きくなる。ビジネスでも、人間関係でも、信頼の複利効果は計り知れない。
習慣の複利。良い習慣を毎日少しずつ積み重ねることは、人生における最も確実な投資である。
複利は、お金の話であると同時に、人生の構造そのものである。