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CORE-SATELLITE STRATEGY

サテライト戦略
―― 私が最も推奨する投資の考え方

CORE-SATELLITE STRATEGY

80%の安定と、20%の挑戦。
投資も人生も、この比率から始まる。

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01

組み合わせるという選択肢

個別株と投資信託は、どちらか一方しか選べないわけではない。両方を組み合わせる「コア・サテライト戦略」という考え方がある。

コア(核)として、資産の大部分をインデックス型の投資信託で運用する。全世界株式やS&P500に連動するファンドを毎月積み立てることで、安定的な資産の土台を作る。

サテライト(衛星)として、資産の一部を自分が興味のある個別株に振り向ける。応援したい企業、配当が魅力的な企業、業界の成長に期待する企業など、自分なりの判断で選ぶ楽しさがある。

たとえば「資産の80%をインデックスファンド、20%を個別株」という配分は、よく見られる組み合わせだ。コアが安定を支え、サテライトが学びと楽しさを提供する。

BEGINNER 初心者の基本配分
CORE 80%
SAT 20%

インデックスファンドで土台を固めつつ、20%で個別株の世界に触れる。まずはここから。

CORE CONCEPT
これが私が最も推奨する投資の考え方だ。
コア・サテライト戦略。
そして、この比率は固定ではない。成長とともに変わっていく。

02

自分の得意なところに投資する

サテライトで個別株を始めるとき、最初に選ぶべきは「話題の銘柄」ではない。自分が詳しい業界の企業だ。

たとえば、自分は不動産業界に詳しかった。だからそこに関連する企業から投資を始めた。不動産の考え方だと、どれくらい利益があるか、どれくらいのリスクがあるかがイメージしやすいのだ。そして保険業界や金融業界もイメージがしやすかった。自分の関連する業界に関しては、数字の意味が肌感覚でわかる。

バフェットはこう言っている。

"Risk comes from not knowing what you're doing."
(リスクとは、自分が何をしているかわからないときに生じる。)
— WARREN BUFFETT, Columbia Business School, 1993

自分が何をしているかわからないとき、それが最もリスクの高い状態だ。逆に言えば、自分がよく知っている領域で投資するとき、リスクは格段に下がる。

バフェットとマンガーは、この考え方を「能力の輪(Circle of Competence)」と呼んでいる。バフェットは株主への手紙でこう書いた。

"You only have to be able to evaluate companies within your circle of competence. The size of that circle is not very important; knowing its boundaries, however, is vital."
(自分の能力の輪の中にある企業を評価できればいい。その輪の大きさは重要ではない。しかし、その境界を知ることは極めて重要だ。)
— WARREN BUFFETT, Berkshire Hathaway Annual Letter, 1996

マンガーも同じことを別の角度から言っている。"Knowing what you don't know is more useful than being brilliant."(自分が何を知らないかを知ることは、頭が良いことより有用だ。)

二人とも、自分の知っている範囲から逸脱せず、その領域を守っている。わからないものには投資しない。テクノロジー株の波に乗り遅れても、理解できないものには手を出さない。その規律を何十年も貫いてきた。


03

だからこそ、20%の挑戦が要る

しかし、同じことをし続けるのは、人間にとって非常に難しい。

人間の脳は、行動するためにできている。じっとしていられないようにプログラムされている。新しい刺激を求め、未知の領域に足を踏み入れたくなる。それは弱さではなく、人間の本質だ。

そして、人生を楽しむためには挑戦も必要なのだ。

だからこそ、その挑戦に20%を使おうということだ。

20%は上手くいくかもしれないし、失敗するかもしれない。しかし、残りの80%が自分を守ってくれる。80%が能力の輪の中にある安定した投資で固められているなら、20%で新しい業界に挑戦しても、人生が崩れることはない。

この方法なら、自分をアップデートして、進化・成長しながら、人生を楽しみながら、新しいことを経験しながら、富を蓄積できる。

能力の輪の中で80%を守り、20%で輪の外側を探索する。探索の結果、新しい領域が理解できるようになれば、能力の輪そのものが広がる。そうして投資家としても、人間としても、少しずつ成長していく。

80/20 EXPLORATION
80%は能力の輪の中で守り、
20%は輪の外側を探索する。
その繰り返しが、投資家としての進化であり、人生を豊かにする設計である。

04

成長に応じた比率の変化――初心者から上級者へ

コア・サテライト戦略の美しさは、自分の成長に合わせて比率を変えられることにある。

初心者は80:20から始める。これは正しい。知識も経験も少ない段階で、資産の大部分をインデックスに預けておくことは、合理的な防御だ。

しかし、投資を続けるうちに変化が起きる。決算書が読めるようになる。企業の競争優位性が見えるようになる。自分なりの投資仮説を持てるようになる。

そうなったとき、比率は変わる。

INTERMEDIATE 中級者の配分
CORE 50%
SAT 50%

企業分析に自信がついてきたら、50:50へ。集中投資の比率を上げていく段階だ。自分の判断で選んだ銘柄が、インデックスを上回る経験をし始める。同時に、自分の判断が間違っていた経験もする。その両方が、投資家としての成長を加速させる。

ADVANCED 上級者の配分
CORE 20%
SAT 80%

上級者に移行するほど、集中投資の比率は高くなる。自分の能力圏(Circle of Competence)が明確になり、深く理解した少数の企業に資本を集中させる。バフェットが「分散は無知に対するヘッジだ」と言ったのは、この段階の投資家に向けた言葉だ。

重要なのは、この移行を焦らないことだ。80:20で3年、50:50で3年、それくらいの時間軸で考える。急いで集中投資に移行して大損するくらいなら、インデックスで堅実に増やしながら、自分のペースで学んだほうがいい。

投資家としての成長は、比率の変化に表れる。
80:20 → 50:50 → 20:80。
この道筋を、自分のペースで歩くことが大事だ。

05

パレートの法則を投資と人生に活かす

80:20という比率には、もうひとつ深い意味がある。パレートの法則だ。

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見したこの法則は、「成果の80%は、全体の20%の要因から生まれる」というものだ。売上の80%は上位20%の顧客から、バグの80%は上位20%のコードから。この法則は、あらゆる場面に現れる。

私はこの法則を、投資だけでなく人生全体に適用している。

80%は現状を維持する。今うまくいっていること、安定しているもの、実績のあるもの。これを低空飛行で守り続ける。毎日の習慣、信頼できる投資先、うまく回っている仕組み。これらに大きな変更は加えない。

20%は新しいことに挑戦する。アップデート、入れ替え、実験。リスクのあること、まだ結果が見えないこと。この20%を常に動かし続ける。

投資で言えば、80%のコアはそのまま積み立てを続け、20%のサテライトを現在の自分の思想に合わせてコントロールする。新しい銘柄を試す、セクターを入れ替える、投資仮説を検証する。この20%が、投資家としての成長エンジンになる。

THE PARETO PRINCIPLE
80%を守り、20%を動かす。
この比率が、安定と成長を両立させる。

06

20%が人生に色を入れる

この80:20の思想は、投資の話にとどまらない。

人生において、80%を安定させつつ、20%は新しいことやリスクのあることに取り組んでいく。そうすることで、人生に色が入り、刺激が生まれ、より豊かな人生を体験することができる。

毎日同じことだけを繰り返していれば、安全かもしれない。しかし、それでは世界は広がらない。かといって、すべてを変えようとすれば、土台が崩れる。

80%の安定があるからこそ、20%で冒険ができる。80%の守りがあるからこそ、20%で攻められる。

読んだことのないジャンルの本を手に取る。会ったことのないタイプの人と話す。行ったことのない場所に行く。やったことのない投資手法を小さく試す。

この20%から、人生を変える発見が生まれる。投資で言えば、この20%のサテライトから、自分だけの投資哲学が形成されていく。

80%を低空飛行で維持しつつも、20%は新しいことやリスクのあることに取り組んでいく。
そうすることで、人生に色、刺激が入り、
より豊かな人生を体験することができる。

それを投資にも活かして取り組んでほしい。

07

今日から始めるサテライト戦略

サテライト戦略を始めるのに、特別な知識は要らない。必要なのは、この3つのステップだけだ。

  • Step 1: コアを決める — 全世界株式またはS&P500のインデックスファンドを選び、毎月定額で積み立てる。これが80%の土台になる
  • Step 2: サテライトを選ぶ — 残りの20%で、自分が興味を持った企業の株を買ってみる。最初は1銘柄でいい。「なぜこの企業を選んだか」を書き留めておく
  • Step 3: 振り返る — 3ヶ月ごとに、コアとサテライトの成績を比較する。サテライトが負けても落ち込む必要はない。その経験こそが、投資家としての資産になる

そして、学びが深まるにつれて、少しずつサテライトの比率を上げていく。自分の成長に合わせて、自分自身の思想に合わせて、この比率をコントロールしていく。それがサテライト戦略の本質だ。


08

自分の手札(アドバンテージ)を最大限に活かす

たとえばあなたが美容系の仕事をしていたとしよう。その場合、美容に関しては普通の人より詳しいはずだ。どのブランドが本物で、どの成分が効いて、どの企業が伸びそうか。業界の空気を、肌感覚で知っている。

だからそれを何らかのビジネスに活かせないか、精一杯考え続ける。投資でも同じだ。美容業界に詳しいなら、化粧品メーカーや美容関連企業の決算を読むとき、他の投資家には見えない景色が見えるはずだ。

人生とは、いかに自分のもともとある手札(アドバンテージ)を利用して、そのリターンを得るかだと思う。

たとえば美しく生まれたなら、最大限にそれを活かしたほうがいい。貧しく生まれたなら、それを逆に最大限に活かす方法があるはずだ。貧しいからこそできること、裕福だからこそできることがある。

内容が極端に聞こえるかもしれない。しかし、本質はシンプルだ。

まず自分の棚卸をする。自分は他の人と比べて、何を持っているか。何に優れているか。どんな経験があるか。それを徹底的に洗い出し、最大限に活かす方法を考える。

自分の手札を知ること。
それが、投資でも人生でも、最初の一歩だ。

09

わらしべ長者――富は交換で育つ

富を増やしたければ、自分の手札を「わらしべ長者」として交換していく。

自分の得意なことで価値を生み出す。その価値を、それを必要としている人に渡す。自分は対価として富を得る。そして、その得た富を新しい何かと交換する。

それを繰り返すことで、富が育っていく。

美容の知識があるなら、それを発信してフォロワーを増やす。フォロワーが増えれば、ビジネスの選択肢が広がる。選択肢が広がれば、収入が増える。収入が増えれば、投資に回せる資金が増える。投資で得た知見が、さらにビジネスの判断力を高める。

そして、それを早くから始めることだ。

アインシュタインはこう言ったとされている。「人類最大の発明は複利だ」と。厳密には、ここで話していることは金融的な複利とは違うかもしれない。しかし、成長も、富も、人間関係も、知識も、すべて複利として捉えることができる。

早く始めれば、交換の回数が増える。交換の回数が増えれば、手札はどんどん良くなる。20代で始めた人と40代で始めた人では、手札の質が圧倒的に違ってくる。

自分の手札を棚卸しし、得意なことで富を生み出し、それをわらしべ長者のように交換し続ける。そのサイクルを、できるだけ早く、できるだけ多く回す。それが人生を豊かにする複利の設計だ。

成長も、富も、複利で捉える。
自分の手札を活かし、交換し、育てる。
そのサイクルを早く始めるほど、人生は豊かになる。

10

次のステップへ

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NEXT STEP
次に、PER(株価収益率)の考え方を学ぶと、
さらに安全で間違いが少なくなる。
自分がまだ知らないこと、他の人が見落としていること。そこにこそα(超過収益)は存在する。PERという指標の裏に隠れた投資家の期待と歪みを読み解く方法を、次の記事で解説する。
PERを読む――マルチプルの中に隠れた期待と歪み →
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DEEP DIVE
人と同じことをしていては、
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COMPOUND
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お金の複利だけではない。メモの複利、習慣の複利、人間関係の複利。バフェットが「人生最高の投資は自己投資だ」と語った、その本質を探る。
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