インデックスとは何か
インデックス(指数)とは、ある市場全体や特定のセグメントの値動きを数値化したものだ。ニュースで「日経平均が上がった」「S&P500が下落した」と報じられるとき、それがインデックスである。
代表的なインデックスには以下のようなものがある。日経平均株価は日本の主要225社の株価を平均したもの。TOPIXは東京証券取引所プライム市場に上場する全銘柄を対象とした時価総額加重型の指数。S&P500は米国の大型株500社で構成され、米国経済の健全性を測る指標として世界中で参照されている。
さらに広い視野では、MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)がある。先進国23カ国と新興国24カ国、合わせて約2,700銘柄をカバーし、世界の株式市場の時価総額の約85%を網羅する。「全世界株式」と呼ばれるファンドの多くが、この指数に連動している。
市場平均に乗るという哲学
インデックス投資の核心は、「市場平均に乗る」という判断にある。個別銘柄を分析して市場を出し抜こうとするのではなく、市場全体の成長に静かに参加する。
この考え方を支持する著名な人物は多い。ウォーレン・バフェットは、自身の遺言で妻への資産運用として「資金の90%をS&P500のインデックスファンドに入れなさい」と指示したことで知られる。世界最高の投資家が、自分の家族にはインデックス投資を薦めたのだ。
チャールズ・エリスは著書『敗者のゲーム』で、投資の世界をテニスに例えた。プロのテニスはウィナー(勝ちショット)で勝敗が決まるが、アマチュアのテニスはミス(エラー)の少なさで決まる。同様に、ほとんどの投資家にとって大切なのは華麗な銘柄選択ではなく、余計なコストや感情的な売買を避けることだという。
インデックス投資は「平凡な選択」に見えるかもしれない。しかし、市場全体の成長力を享受しつつ、コストを最小限に抑え、感情に振り回されない仕組みを持つことは、実は非常に合理的な戦略である。
アクティブ運用が負ける理由
S&P Dow Jones Indicesが公表するSPIVAスコアカードは、アクティブファンドとインデックスの成績を定期的に比較している。その結果は一貫している。
米国の大型株アクティブファンドの約90%が、15年以上の期間でS&P500に負けている。日本でも同様の傾向が見られ、国内株式アクティブファンドの過半数がTOPIXを下回る成績を残している。
なぜ多くのプロが市場平均に勝てないのか。理由はシンプルだ。まず、市場全体のリターンは、すべての投資家のリターンの加重平均に等しい。つまり、市場平均を上回る投資家がいれば、必ず下回る投資家もいる。そしてアクティブ運用にはリサーチコスト、売買手数料、高い信託報酬がかかる。コストを差し引いた後では、平均的なアクティブファンドは必然的にインデックスを下回ることになる。
もちろん、市場平均を上回るファンドも存在する。しかし、それが事前にどのファンドなのかを見分けることは極めて難しい。過去の好成績が将来の好成績を保証しないことは、データが繰り返し示している。
長期投資とインデックスの相性
インデックス投資は、短期の値動きで利益を狙う手法ではない。5年、10年、20年という時間軸で、市場全体の成長に参加することを前提としている。
歴史を振り返ると、世界の株式市場は数々の危機を経験してきた。リーマンショック、欧州債務危機、コロナショック。しかし、そのたびに市場は回復し、長期的には右肩上がりの軌道を描いてきた。全世界株式の過去30年間の年平均リターンは、おおよそ7〜8%程度(円建て、配当再投資ベース)である。
ただし、これは「いつ始めても必ず儲かる」という意味ではない。投資期間が短ければ、元本割れのリスクは当然ある。また、過去のリターンが将来を保証するものでもない。インデックス投資が前提とするのは、「人類の経済活動が長期的に成長し続ける」という見通しであり、それは信念に近いものだ。
その信念を持てるなら、インデックス投資は最もシンプルで、最も再現性の高い資産形成の手段となる。