投資の本質
投資とは、今持っているお金を将来の価値に変える行為のことをいう。株式や債券を買うことだけが投資ではない。銀行にお金を預ける行為も、広い意味では「元本を預けて利息を得る」という投資の一種といえる。
ただし、銀行預金の金利は長らく極めて低い水準にある。日本のメガバンクの普通預金金利は、長い間0.001%程度だった。100万円を1年間預けても、利息はわずか10円。この水準では、お金は「置いてあるだけ」に近い。
一方で、世の中の物価は少しずつ上がっていく。同じ100万円でも、10年後に買えるものは今より少なくなる可能性がある。預金だけに頼ることの限界は、ここにある。
お金が減る理由 ── インフレーション
物価が上がることを、インフレーション(インフレ)という。インフレが起きると、同じ金額で買えるものが少なくなる。つまり、お金の「実質的な価値」が下がる。
たとえば、年2%のインフレが10年続くと、100万円の実質的な価値はおよそ82万円相当にまで目減りする。額面は100万円のままでも、購買力が18%近く失われる計算になる。
日本では長くデフレ(物価下落)が続いていたため、インフレの実感が薄い時代が長かった。しかし2022年以降、食品・エネルギーを中心に物価上昇が顕在化し、2023年の消費者物価指数は前年比3%を超える上昇を記録した。インフレは「遠い国の話」ではなくなっている。
預金に置いたお金が減っているわけではない。しかし、その100万円で買えるものが少しずつ減っていくのだとすれば、「何もしない」という判断にもリスクがある。投資を考える出発点は、ここにある。
投資の目的は人それぞれ
投資を始める理由は、一人ひとり異なる。老後の生活資金を準備したい人もいれば、子どもの教育費を積み立てたい人もいる。住宅購入の頭金をつくりたい人、あるいは「働き方を選べる自由」を手に入れたい人もいるだろう。
どれが正しいということはない。大切なのは、目的を持っているかどうか。目的がないまま投資を始めると、相場が下がったときに不安に駆られて売ってしまったり、SNSの情報に振り回されて方向を見失ったりしやすい。
「何のために投資をするのか」。この問いに対する答えは、投資の方法や期間、取れるリスクの大きさをすべて決める土台になる。急いで答えを出す必要はないが、始める前に一度、静かに考えてみる価値はある。
始める前に確認すること
投資に踏み出す前に、いくつか確認しておきたいことがある。これは「条件を満たさなければ投資してはいけない」という話ではなく、安心して続けるための土台づくりだと思ってほしい。
生活防衛資金があるか。急な出費や収入の途絶に備えて、生活費の3〜6ヶ月分を預金で確保しておくこと。この資金がないまま投資を始めると、お金が必要になったとき、含み損を抱えた状態で売却せざるを得なくなる。
高金利の借金はないか。クレジットカードのリボ払いや消費者金融の借入がある場合、まずそちらの返済を優先すべきだ。年15〜18%の金利は、どんな投資のリターンよりも高い。借金を返すことが、最も確実な「投資」になる。
目的を言葉にできるか。漠然と「お金を増やしたい」ではなく、「10年後の教育費として500万円」「65歳までに老後資金2,000万円」のように、できるだけ具体的に言葉にしてみる。目的が明確であるほど、手段の選び方も明確になる。