この人は何者か
藤野英人。1966年生まれ。レオス・キャピタルワークス創業者にして、日本を代表するアクティブファンド「ひふみ投信」の運用責任者。年間100社以上の企業を訪問し、経営者と直接対話を重ねることで、インデックスを上回るリターンを追求し続けてきた。
その投資哲学の核は明快だ——「いい人が経営する、成長する会社に投資する」。財務諸表の数字だけでなく、経営者の人柄、組織の文化、社員の表情まで見る。足で稼ぐリサーチを愚直に続けることで、中小型株の中に眠る「未来の勝者」を見つけ出す。
しかし藤野の功績は運用成績だけにとどまらない。著書やメディア出演を通じて、投資を「怖いもの」から「未来への参加」へと再定義した。「お金を眠らせておくことは、未来を信じないことだ」——この言葉が、何万人もの個人投資家の背中を押してきた。
なぜ今この人を読む価値があるか
新NISAの開始で、日本の個人投資家は爆発的に増えた。しかしその多くが選ぶのはインデックスファンドだ。「何も考えなくていい」という安心感の裏で、投資の本質——企業を選び、未来に賭けるという行為——が見失われつつある。
藤野は、この状況にこそ価値を持つ存在だ。インデックス投資を否定するのではなく、「なぜ投資するのか」という根本の問いを突きつける。お金を託す先には、生きた人間がいる。その人間を見に行く。話を聞く。信じられるかどうかを自分の目で確かめる。この愚直なプロセスこそが、藤野が体現し続けてきた投資の原点だ。
日本株市場が再び世界の注目を集める今、藤野の「足で稼ぐ投資」の哲学は、個人投資家が自分なりの判断軸を持つための最良の教材になる。
判断の核
藤野の投資判断は、数字と人間の両方を見る。どちらか一方だけでは足りない。財務の裏にある「経営者の意志」を読み取ることが、彼の運用の根幹だ。
成長×割安(GARP)
Growth at Reasonable Price——成長性がありながら、まだ市場が正当に評価していない企業を見つける。藤野が得意とするのは、大型株の陰に隠れた中小型株の中から、将来の主役を発掘することだ。市場が見落としている成長の芽を、誰よりも早く見つけに行く。
経営者の質(Management Quality)
藤野は「会社の玄関を見ればわかる」と言う。靴が揃っているか、受付の対応はどうか、社員の目が輝いているか。年間100社以上を訪問する中で磨かれた「人を見る目」が、数字には現れない企業の真の力を見抜く。経営者が誠実か、ビジョンを持っているか、社員を大切にしているか——この定性判断が、藤野の銘柄選定の最終フィルターになる。
日本の中小型株という宝の山
機関投資家の目が届きにくい中小型株市場には、情報の非対称性が残っている。つまり、足を使って調べた者だけが得られるアドバンテージがある。藤野はこの領域で、「自分の足で歩いて見つけた確信」を武器に勝負し続けてきた。
習慣・仕事観
藤野の仕事は「企業訪問」に始まり「企業訪問」に終わる。デスクの前で株価チャートを眺めるのではなく、現場に足を運び、経営者の言葉を直接聞くことが、彼の投資プロセスの根幹だ。
年間100社を超える企業訪問は、単なるルーティンではない。自分の仮説を現場で検証する作業だ。財務データが示す成長の兆候は本物か。経営者の語るビジョンに実行力は伴っているか。工場の稼働状況、従業員の士気、取引先の評判——あらゆる角度から企業の実態を確認する。
同時に、藤野は書くことと発信することを重視する。著書は多数に及び、個人投資家向けのセミナーやメディア出演も積極的にこなす。「投資の民主化」——専門家だけのものだった投資の知恵を、普通の人に届けること。これを自らの使命と位置づけている。
まず触れるべき3つ
藤野英人の思想に触れるなら、この三つから始めるのがいい。