2026 · MARCH · 26 — THURSDAY

投資キュレーション

LONG-TERM INVESTOR'S LENS — BASED ON PUBLIC SOURCES

公開情報をもとに、長期投資家として今週読んでおきたいトピックを独自にまとめました。

実質賃金 · プラス転換 TSMC熊本 · 3ナノ 東証PBR改革 連続増配の構造
📌
この記事は各出典の公開情報をもとに、長期投資家の視点で独自に要約・コメントしたキュレーション記事です。 記事本文の著作権は各出典に帰属します。内容の詳細・正確性は各出典元をご確認ください。投資判断は自己責任でお願いします。
CURATOR'S NOTE — 2026.03.26

今週の重要トピックを整理した。実質賃金が13ヶ月ぶりにプラスに転じ、賃金と物価の好循環が実態として見えてきた。 TSMC熊本は3ナノへの格上げで日本の半導体戦略が大きく動いた。 東証PBR改革が3年目に入り、企業と投資家の変化が数字に出始めている。4つのトピックを長期視点で整理した。

01 / 04

実質賃金、2026年1月に13ヶ月ぶりプラス転換 基本給の伸びが過去最高水準

厚生労働省が3月8日に公表した2026年1月の毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比+1.4%となり、 13ヶ月ぶりにプラスに転じた。市場予想(+0.9%)を上回る結果だった。 名目賃金の伸び(+3.0%)が物価上昇率を上回ったことが主因で、基本給の伸びは33年3ヶ月ぶりの高水準となった。

ただし、第一生命経済研究所は「4月以降に原油価格高騰の影響が出た場合、再びマイナスに転化するリスクがある」と指摘している。 1月の数字は速報段階で、4月8日公表の確報で改訂される可能性もある点に注意が必要だ。

INVESTMENT PERSPECTIVE

実質賃金のプラス転換は、消費回復の予兆として重要なシグナルだ。ただし「1ヶ月のプラスで定着と見なすのは早い」。 春闘の賃上げが中小企業まで浸透し、実質賃金が数ヶ月連続でプラスを維持できるかどうかが本当のチェックポイントだ。 消費関連株への投資を検討するなら、この定着の確認を待つ姿勢が長期投資家らしい判断だ。

実質賃金の定着 消費回復のタイミング 中小企業への波及

02 / 04

TSMC熊本第2工場、3ナノへ格上げ 投資額170億ドルに拡大・AI半導体国内初の最先端拠点へ

TSMCは2026年2月、熊本県菊陽町で建設中の第2工場(JASM)で回路線幅3ナノメートルの半導体を国内初めて量産する計画を日本政府に伝えた。 当初は7ナノの予定だったが、生成AIの需要急増を受けて最先端品へ格上げされた。 設備投資額は当初の122億ドルから170億ドル(約2兆6,000億円)規模へ拡大する見込みだ。

出資構成はTSMCが約86.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズが約6.0%、デンソーが約5.5%、トヨタが約2.0%。 政府は追加支援を検討しており、熊本は「日本の半導体安全保障の核心」となりつつある。

INVESTMENT PERSPECTIVE

3ナノへの格上げは単なるスペック変更ではなく、「熊本サプライチェーン全体の恩恵が拡大する」ことを意味する。 より先端のプロセスには、より高精度の装置・材料・検査が必要になるためだ。 信越化学・SUMCO・東京エレクトロン・SCREENなど日本企業がこの恩恵の直接的な受け手になる。 TSMC熊本への長期投資ストーリーは、エコシステム全体を地図として持つことで初めて活きる。

サプライチェーン恩恵 3ナノ → 装置・材料需要増 経済安全保障

03 / 04

東証PBR改革、3年目の節目 開示内容の「質」が問われる段階へ

東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を要請してから2026年で3年が経過した。 2026年から、PBR改善策の開示は「開示済」という記載から、具体的な目標・期間・改善手段の記載へと深化することが求められている。 東証のフォローアップ会議では「PBR・ROEを少し向上させただけで終わりとならないように」という投資家の声が紹介されている。

3月期決算企業による増配・自社株買いは過去最高ペースで進み、東証プライム企業の総還元額は前年比12%増の見通しだ。 一方で「ROE8%、PBR1倍を超えれば一安心」という意識の企業も依然存在しており、取組みの差が広がっている。

INVESTMENT PERSPECTIVE

増配・自社株買いは「FCFの最善の使い道がそれかどうか」という観点で評価したい。 バフェットが評価する経営者は「成長機会がないときは積極的に株主に返し、機会があるときは迷わず投資する」という資本配分の質を持つ人物だ。 PBR改善策の「開示内容の質」が上がった今、投資家の仕事は「やっているか」でなく「なぜ・どんな規模・どんな優先度でやるか」を読み取ることに移った。

FCFの用途 資本配分の質 ROE改善の真偽 経営者の判断力

04 / 04

花王24年連続・サンドラッグ23年連続 連続増配企業が示す「業績の粘着性」

2026年3月期、花王は24年連続増配(年間64円)を達成する見込みだ。 またサンドラッグは23年連続増配を継続しており、2003年比で年間配当額が34.6倍に成長している。 こうした連続増配企業は、景気変動に関わらず安定した利益を出し続ける事業構造(moat)を持つ傾向がある。

2026年3月期の東証プライム企業の増配計画企業数は約900社(全体の約44%)で、 減配予定は190社(約9%)にとどまる。株主還元の拡大基調は継続している。

INVESTMENT PERSPECTIVE

連続増配は「業績の粘着性」を可視化する最も分かりやすいシグナルのひとつだ。 24年連続増配を維持するためには、24年間にわたって安定したFCFを生み出し続ける事業構造が必要になる。 「何年連続増配か」より「なぜ増配し続けられるのか」の事業構造を読むことが、長期投資家の本質的な仕事だ。 花王であれば消費財ブランドのmoat、サンドラッグであれば立地戦略と調剤の粘着性が答えになる。

連続増配 · moat FCFの粘着性 ブランド力 · 参入障壁 長期複利