リチャード・ファルドCEO — 「ゴリラ」と呼ばれた独裁者
リーマン・ブラザーズのCEOリチャード・ファルドは、社内で「ゴリラ」と恐れられていた。威圧的なリーダーシップスタイルで知られ、悪いニュースを持ってくる部下を怒鳴りつけることで有名だった。この恐怖の文化が、組織内のリスク情報の流れを致命的に遮断した。
2000年から2007年までの報酬合計は約$484 million(約4億8,400万ドル)。株式報酬を含めたこの巨額の報酬は、会社が崩壊に向かう間も支払われ続けた。
2008年4月、サブプライム危機が深刻化する中でファルドは「最悪の事態は過ぎた」と公言した。しかし社内では、バランスシート上の不良資産が膨れ上がっていた。
議会証言でファルドは「完全な責任を受け入れる」と述べたが、同時に空売り業者と虚偽の噂がリーマンを破滅に追い込んだと主張した。自らの経営判断やリスク管理の失敗には、最後まで正面から向き合うことはなかった。
Repo 105 — 四半期末の会計操作
リーマン・ブラザーズの崩壊後、破産管財人アントン・ヴァルカスの報告書が明らかにした最も衝撃的な事実がRepo 105と呼ばれる会計操作だった。
その手法は巧妙だった。四半期末の直前に、約$500億の資産を一時的にバランスシートから除外する。$100の資産を$105で「売却」し、四半期報告書を提出した後に買い戻す。わずか$5の上乗せによって、この取引は会計上「売却」として扱われ、レバレッジ比率を実態よりも低く見せることができた。
- アメリカの法律事務所はこの取引に対する法的意見書の発行を拒否した
- ロンドンのLinklaters法律事務所がイギリス法に基づいて意見書を発行。取引はロンドン子会社経由で実行された
- 監査法人Ernst & YoungはRepo 105の存在を認識しながら、投資家や規制当局に報告しなかった
Repo 105は「違法」ではなかったかもしれない。しかし投資家を欺く目的で使われたことは、ヴァルカス報告書が詳細に立証している。合法と正当は、別の概念だ。
内部告発者 Matthew Lee
リーマン・ブラザーズの上級副社長マシュー・リーは、2008年5月に経営陣へ内部告発レターを送付した。バランスシートの操作を具体的に指摘し、会計処理に重大な懸念があることを訴えた。
リーは四半期末にバランスシートから数百億ドルの資産が一時的に消えていることに気づいていた。彼の告発は正確で、後にヴァルカス報告書が裏付けることになる内容そのものだった。
しかしリーマンの経営陣は警告に耳を傾けなかった。マシュー・リーは告発の直後に解雇された。リーマンが破綻するわずか数か月前のことだった。
組織が最も必要としている情報は、しばしば組織が最も聞きたくない情報と一致する。マシュー・リーの運命は、その構造的矛盾を象徴している。
ベア・スターンズの前兆(2008年3月)
リーマンの崩壊には前兆があった。2008年3月、ウォール街第5位の投資銀行ベア・スターンズが事実上の破綻を迎える。その崩壊のスピードは、誰もが想像していなかったものだった。
- 3月10日 — 「流動性は十分にある」と公式声明を発表
- 3月13日 — 手元現金が$180億から$2億に激減。わずか3日で
- 3月16日 — JPモルガンが$2/株で買収(1年前の株価は$170)
CEO アラン・シュワルツは崩壊のわずか3日前にCNBCのインタビューで「流動性に問題はない」と断言していた。
ベア・スターンズの崩壊は、金融機関が「信用」という目に見えない基盤の上に立っていることを証明した。信用が失われた瞬間、どれだけの資産を持っていても意味がない。そしてこの教訓は、6か月後にリーマン・ブラザーズで繰り返されることになる。