LEHMAN CRISIS — DEEP DIVE
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世界への波及

Global Contagion

ウォール街で始まった危機は、数週間で大西洋を越えた。
アイスランドから日本まで、誰も逃げ場はなかった。

アイスランドの壊滅

人口わずか32万人の北欧の島国が、金融危機で最も劇的な崩壊を経験した。

アイスランドの3大銀行 — カウプシング、ランズバンキ、グリトニル — は2000年代に急速に膨張し、その総資産はGDPの約11倍に達していた。国の経済規模をはるかに超える金融システムが、外貨建ての短期借入で運営されていた。

指標数値
3大銀行の運命2008年10月、1週間で3行すべてが国有化
通貨(クローナ)50%以上下落
株式市場約90%下落
失業率1% → 9%
銀行家の処罰26人が有罪判決(実刑を含む)

アイスランドは世界で唯一、金融危機に関連して銀行の経営者を実刑に処した国となった。他の主要国では、刑事責任を問われた銀行幹部はほぼ皆無だった。


欧州への波及

欧州の金融機関は、米国の住宅ローン関連証券に大量に投資していた。危機は瞬く間にヨーロッパ全土に広がった。

影響
イギリスノーザン・ロック取り付け騒ぎ → 国有化。RBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)に£450億の救済。世界最大の銀行救済の一つ
アイルランド不動産バブル崩壊 → 政府が銀行の全債務を保証 → 政府自体が財政危機に → EU/IMFから€850億の支援を受ける
ギリシャ金融危機が財政の脆弱性を露呈 → ソブリン債務危機に発展(2010年〜)。ユーロ圏の存続自体が問われる事態に

アイルランドのケースは特に教訓的である。政府が銀行の全債務を保証したことで、銀行の危機が国家の危機に転化した。「銀行を救うために国を危険にさらす」という構図は、欧州債務危機の原型となった。


日本への影響

日本の金融機関はサブプライム関連証券への直接的なエクスポージャーは比較的小さかった。しかし、世界経済の急収縮は輸出依存の日本経済を直撃した。

指標数値
日経平均18,261円(2007年7月) → 6,994円(2008年10月28日)、約62%下落
トヨタ自動車71年ぶりの営業赤字(▼4,610億円、2009年3月期)
社会問題「派遣切り」が社会問題化。2008年12月31日〜、日比谷公園に「年越し派遣村」が開設

年越し派遣村には約500人が集まり、食事と寝場所が提供された。製造業の非正規労働者が大量に雇い止めにあい、住居も同時に失うケースが続出した。リーマン・ショックは日本においても、金融市場だけでなく、雇用と生活の危機だった。


一般市民への影響

数字の裏には、住居を失い、職を失い、老後の蓄えを失った何百万もの家族がいた。

指標数値
住宅差し押さえ2006年72万件 → 2010年290万件、累計1,000万件
失業率(米国)4.7%(2007年10月) → 10.0%(2009年10月)。870万人の雇用喪失
家計純資産$69兆 → $55兆($14兆が消失
退職金口座(401k)2008年だけで$2兆の損失

サクラメントなどの都市にはテント村が出現した。差し押さえで家を失った家族が、都市の空き地にテントを張って暮らした。21世紀のアメリカで、大恐慌時代の「フーバーヴィル」を彷彿とさせる光景が広がった。

ウォール街の危機は、メインストリートの危機だった。失われた$14兆の家計資産の大部分は、住宅という「普通の人々の最大の資産」の価値下落だった。

DEEP DIVE — LEHMAN CRISIS

危機が世界を揺るがした後、規制改革と前例のない金融緩和の時代が始まった。